あぶらや燈千

おもてなしストーリー

初めて訪れるお客様も、何度も足を運んでくださるお客様も、あぶらや燈千で過ごしていただく時間はかけがえのない「一期一会」です。
お客様との出会いの数だけ、紡がれていく「ストーリー」。数多くの「おもてなしストーリー」から、そのいくつかをご紹介します。

STORY01 今回が最後の旅行になりそうです  /  仲居・樋口ひとみ

仲居・樋口ひとみ

とても笑顔が素敵な印象のお母様、娘さん、息子さんのご家族がご来館されたときのことでした。 お部屋にお通しし、お食事処で料理出しをしながらお話を伺っていくにつれ、お客様との会話も弾み、和やかな雰囲気の中で突然、お母様が切り出されました。

『今回が最後の旅行になりそうです』

ただならぬ空気は感じたものの、最初は『最後』という言葉が何を意味しているのか、私は汲み取ることができませんでした。しかし、お話を伺っていくにつれ、その意味していることが徐々にはっきりしてきたことを今でも覚えています。それは、お母様がご病気のため、最近まで入院されていた。しかし治療の甲斐もなく、恐らくもう長くはないということ。

その事実に直面した時、咄嗟に自分の両親の顔が思い浮かびました。そして、お子様たちの気持ちを察すると、何とも言えない感情がわき上がって動揺を隠せずに涙を流しそうにも… しかし、私たち「あぶらや燈千」は企業理念として【笑顔をわかちあう】を掲げています。どんなことがあってもこれに反することはできないと、必死で涙をこらえ、笑顔を絶やすことないことに終始努めました。

仲居・樋口ひとみ

必死で笑顔を作ると、それは自然とお客様にも伝わってしまうものです。ですから、私は知ってしまった事実は頭の片隅に置きつつも、普段通りの“私のおもてなし”に徹しました。 それでも気になるのは「今回が最後の…」というくだり。

県外から当館へお越しいただいたこともあり、「長野県」を好きなってほしい、この瞬間を楽しんでほしい、最高の思い出にしてほしい。そんな思いから長野の代表的な観光地のパンフレットをかき集め、できる限りのご提案をさせていただきました。私の思いが伝わったのか、大変喜んでくださり、その後、お客様の笑顔は絶えることがありませんでした。

そして、最後の挨拶となった出発の朝。「あぶらやさんを選んで良かった!樋口さんに担当していただけて良かった!」と、涙を浮かべながらおっしゃっていただけた一言に感じ入るものがありました。溢れ出そうな涙を最後まで必死に堪えて…。

来館されるお客様は、それぞれ状況は異なりますが、「特別な機会の宿泊」に当館を選ばれることが多くあります。そこで重要になるのが“私のおもてなし”。そんな大切な一瞬に立ち会える喜び、一期一会の大切さを改めて感じながら、「最高のおもてなし」を追い続けていきたいと思います。